研究概要 |
ビジョンチップは,生体の視覚機能をアナログCMOS集積回路として実現した,センサー内臓の視覚情報処理用集積回路である.チップに対し外界像は並列に入力され,回路網のダイナミックスにより完全に並列に処理されるため,従来の直列型デジタルコンピュータが不得手とする画像処理の諸問題に対し,一つのブレイクスルーを与えることが期待される.本研究は,ビジョンチップ設計の基礎となる超並列抵抗回路網モデルの構築とCMOS回路の設計にある.平成5,6年度の研究では,網膜の双極細胞の特性をアナログCMOS回路により表現することを重点目標とし,以下の成果を得ることができた. 1.網膜の双極細胞の空間特性をシミュレートする超並列抵抗回路網モデルを構築し,入出力を計算機シミュレーションにより解析した.次にこのモデルのアナログCMOS集積回路により設計し,回路シミュレーションソフトにより動作の模擬実験を行った.さらにこのモデルを発展さ,入力の光強度に対して順応機能を持つ双極細胞モデルを構築し,同様にアナログCMOS回路設計とシミュレーションソフトによる動作解析を行った. 2.上記双極細胞モデルを動き検出回路に発展させるために,双極細胞応答の時間特性をも記述する超並列抵抗回路網モデルを構築した.またこのモデルの動く視覚入力に対する入出力特性を計算機によりシミュレーション解析し,モデルが生理学実験により得られている双極細胞のものとよく一致することが分かった.また細胞間距離や細胞の抵抗などの回路パラメータの値がどのように出力に影響を及ぼすかを数学的および数値的に明らかにした.
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