本研究の目標は、制御システムにおける故障発生、モデリング誤差、経年変化をシステムのパラメータ(実パラメータ)の変動としてとらえ、実パラメータの変動ならびに不確かさの存在にもかかわらず、閉ループシステムの安定性を保持し、さらにある指定した制御性能を保証する、すなわちロバストパフォーマンス制御の構成理論を体系化しようとするものであった。特に重点をおいたのは、(1)故障状態を表現するモデルの開発、(2)故障発生に伴う制御性能の劣化を評価する基準の開発、(3)統合的制御系設計理論の確立、(4)設計アルゴリズムの開発、(5)CADシステムへの組み込み、(6)入力むだ時間への対応であった。 上記の重点項目への解決策を与えることができたが、さらに本研究を通して、故障状態を実パラメータ変動としてとらえる一般的な手順が明らかになり、これを基礎としてロバスト制御システムの構成へ接続することができるようになった。設計理論の確立では極配置とロバスト安定性の両立を計る方法を開発した。また入力むだ時間に対しては、有限次元のリカッケ方程式による設計を可能とする方法を見出すことができた。帰着されたロバスト制御システムの構成は、一般に高次の非線形状態方程式によって記述されるシステムの構成問題となるが、これを具体的に解くために、ゲインスケジューリングの手法を使って、表面的には線形問題を解く形に問題を変化することを検討し、有効性を確認した。 また、これらの研究を推進する上で必須なCADシステムについては、当研究室のCADシステムに組み込み、研究に活用された。
|