研究概要 |
アルカリ骨材反応,特にアルカリシリカ反応(ASR)による損傷を受けたコンクリート構造物を補修するにあたって用いられるライニングなどによる表面処理工法について,各種処理仕様の特徴および施工面積率等に関し,水分の制御に着目した検討を行なった結果,以下のような結果が得られた。 1.ウレタンやエポキシなどの樹脂でライニングする表面処理は,コンクリートがASR膨張を生じた場合,ひび割れや膨れ,ゲルの析出などの外観上の損傷が著しく,その使用に際してはひび割れ追従能力の優れたものが好ましい。 2.シランを用いた発水系の仕様では,比較的ASR膨張を抑制する効果が認められた。また,その効果はコンクリート内部の水分が逸散できる機会のある環境において顕著となる。シランの使用量や他の仕様との併用などについての検討が必要である。 3.表面処理を施すコンクリートの表面積と体積との比や施工面積率はASR膨張抑制効果に影響を与える要因であり,表面処理のASR膨張抑制効果に影響を与えるものとして考慮しなければならない。また,内部水分量も表面処理によるASR膨張抑制効果に影響を与える要因であると考えられるが,内部水分量が8〜10%程度の違いの範囲ではその影響はあまり大きくない。 4.コンクリートの表面処理による水分制御によってASR膨張の抑制をはかる場合,水分の供給を中心とした透水性と,水分の逸散を中心とした透湿性の両者を考慮しなければならない。 5.以上に示した室内実験におけるASR膨張の進行程度は,相対動弾性係数を利用することにより定性的な評価ができた。
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