コンクリート構造物の早期劣化の原因として挙げられているアルカリ骨材反応によるコンクリートの膨張や塩化物による鉄筋の腐食においては、コンクリート中の水分が重要な要因となることが多い。これに対し、コンクリート中の水分を制御する目的で用いられる表面処理仕様の一つに、シランを代表とする発水材によるものが注目を浴びている。シランには多くの種類があり、発水性能に差が見られるため、その疎水基(アルキル基)および親水基(アルコキシ基)の大きさおよび個数などを変化させることにより、シランの分子構造を変化させ、これらが発水性に与える影響を検討した。得られた主な結論は以下の通りである。 1.小角柱供試体を用いた試験により、透湿性は、短期的にシランの分子量の大きなものが小さなものに比べて劣る結果となった。また、透水性は疏水基(アルキル基)が大きく、親水基(アルコキシ基)が小さいほうが優れていた。これらの短期の性能は、現実の土木構造物で乾湿繰り返し作用を受ける場合も多いため、重要であると考えられる。このことから、本研究で用いたシランの中では分子量が262のものが最も優れていると判断された。 2.分子量が極めて小さいシランはあまり発水性を期待できない。これは分子量が小さすぎると疎水基が水分を制御するのに十分な大きさでなくなるためと考えられる。その限界の分子量は150程度と思われる。 3.シランによる表面処理を施工することにより、アルカリ骨材膨張、鋼材腐食をある程度は制御することができた。しかし、もともと塩分を大量に含むコンクリートの場合は、この表面処理のみでは制御できないものと考えられる。
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