本研究では、まず、海洋環境下に施工された構造体コンクリートの品質評価をコンピューターシミュレーションによって行うための手法について検討を行った。次に、このシミュレーション結果も含め、海洋コンクリート構造物の耐久性設計手法確立のために必要となる幾つかの具体的資料の作成を行った。以下に今回の主な検討内容について示す。 1.構造体コンクリートのシミュレーションモデルを作成した。このモデルは、構造体コンクリートの品質が内部欠陥の存在状況に支配されると考え、この欠陥を球状空隙の集合としてモデル化したものである。ここでは、構造体コンクリートの品質は、ランダム関数を用いてモデルコンクリート内部へ配置された球状欠陥空隙の大きさと数の組み合わせによって表わすことができると考えた。 2.コンクリート中の鉄筋のマクロ腐食モデルを作成した。これを上記1.のモデルと組み合わせ、種々の欠陥を有する構造体コンクリートの海洋環境下における鉄筋腐食ひび割れ発生までの期間のシミュレーションを行った。これによって、コンクリート内部の欠陥存在状況と構造物の劣化速度の関係をある程度定量化することができた。 3.上記1.のモデルと実際の構造体コンクリートとの整合性を取るため、および海洋コンクリート構造物の耐久性設計資料となすため、実コンクリートの塩分浸透性に関して1988年から1993年までに報告された約60編の文献を整理し、塩分拡散係数やコンクリート表面塩分量などについてデータ解析を行った。 海洋コンクリート構造物における複合劣化の問題を取り上げ、ここでは、塩害と中性化が複合する環境における劣化速度評価モデルを構築した。
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