道路橋RC床版の損傷の主原因は、せん断耐力の不足であり、特に、断面を貫通して発生するひび割れによる床版のせん断耐力の低下に起因するとの観点に立ち、人工的な貫通ひび割れを導入することによって、あらかじめ損傷を受けた状態にしたRC床版供試体の押し抜きせん断破壊試験を実施して、その破壊耐力及び破壊性状を検討した。 実験に用いた供試体は、スパン80cmで2辺を単純支持した、長さ100cmまたは150cm、厚さ10cmのRC床版で、中央部に1本または2本の人工的貫通ひび割れ(幅0.35mm)を導入したものであり、載荷位置を変化させて部分的集中荷重(載荷面積10cm*6cm)を作用させた。これらの実験結果から得られた結論の概要は以下のとおりである。 (1)貫通ひび割れを有するRC床版の押し抜きせん断耐力は、荷重位置が貫通ひび割れに近づくに従って、ほぼ直線的に低下する。従って、耐力が最小になるのは、荷重が貫通ひび割れと接する位置に作用する場合である。 (2)貫通ひび割れが複数の場合および貫通ひび割れの間隔が小さい場合には、床版の押し抜きせん断耐力はより低下するのであるが、その程度は予想以上に小さいものであった。 (3)初期損傷の無いRC床版の押し抜きせん断耐力を算定する前田・松井の式を、貫通ひび割れを有し、かつ、任意の位置に荷重を受ける床版の耐力算定に拡張する方法を提案し、その妥当性を示した。
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