研究概要 |
建設と環境の調和が厳しく求められる今日,本研究は,その具体的なテーマとして鳴き砂を取上げ,日本の鳴き砂海岸の分布,地形と地質の特徴,鳴き砂の粒子特徴と鉱物組成および発音特性について,現地調査と室内試験を実施し,幾つかの検討によって以下のような結果を得た。 (1)日本の鳴き砂海岸は,感度の高いものが20カ所余見られ,その周辺や後背地には,必ず,古第三紀やジュラ紀以前の花崗岩類(花崗斑岩,角せん石黒雲母花崗岩,石英斑岩など)の存在が認められる。 (2)鳴き砂の主鉱物は石英粒であり,鳴き砂海岸では,その粒径が平均0.36mm以上,変動係数0.25以下にあり,含有率はいずれも65%以上(砂粒数比)となっている。 (3)開発された発音装置(1kgf/cm^2の圧力で自動的に乳棒が乳鉢の中の鳴き砂を突く装置)によって,日本の鳴り砂の発音特性を検討した結果,いずれもスペクトルが基音周波数で1000Hz以下,そして2倍音,3倍音にも卓越した周波数があり,倍音特性を認める。最大音圧は,いずれの鳴き砂とも55dB以上であり,発音の継続時間も50msec以上であった。音色は弦楽器のそれと相似し,いずれも豊かな発音特性を示した。 (4)一般に,石英の平均粒径が大きくなるにしたがって,鳴き音の強さは大きくなり,高さは低くなる傾向を示した。 (5)鳴き砂海岸の今後の保全と復元のために,珪砂を使った人工鳴き砂の精製に成功した。そして,この技術によって粒径がコントロールできる鳴き砂を精製し,さらに詳細な鳴き砂の発音特性の検討が可能となった。 以上のように,本研究の成果は,自然の遺産でもある鳴き砂の保全と復元にきわめて有効な内容であり,その適用が強く期待されている。
|