開水路流れにおける壁面せん断力分布は、流れの3次元性のため一様とならず、隅角凹部あるいは隅角凸部などの強い2次流の存在する領域では分布の非一様性が顕著であることが明らかにされている。本研究では、長方形断面水路の側壁近傍の流れに着目して壁面せん断力分布を計測するとともに、分布の非一様性と流れの3次元構造との関係について検討した。得られた成果の概要を分担課題ごとに以下に示す。 1.速度計測法を用いた開水路流れにおける壁面せん断力の分布特性に関する研究:レーザドップラ流速計を用いた速度計測法およびプレストン管法により側壁近傍の平均壁面せん断力分布を計測した。得られた分布は、従来の研究で指摘されているように、流れの3次元性の影響を受けて波状分布を示した。この分布の非一様性と流れの構造との関係を検討するために、乱流モデルの1種である代数応力モデルを用いた計算結果との比較を行なった。その結果、壁面せん断力分布の計測値と計算値は良好な一致を示すことが知れるとともに、せん断力分布の波状性が2次流の分布で説明されることが確かめられた。 2.可視化法を用いた開水路流れにおける壁面せん断力の分布特性に関する研究:壁面極近傍に白金線を設置して水素気泡を発生させ、形成されるタイムラインより瞬間速度分布を捉え、その結果を用いて壁面せん断力分布を検討した。その結果、底面における分布は速度計測法で得られた平均壁面せん断力分布と同様に、2次流の存在により波状分布を示すことが確かめられた。一方、側壁における分布については、可視化法で得られる瞬間速度の低速部の位置と平均壁面せん断力分布とが対応しない結果となり、瞬間分布と平均分布では特性に差異のあることが指摘された。
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