本研究は高速道路における事故発生時の交通状態を対象にしているため、時々刻々の実データを入手することは困難である。したがって、データ取得と各種実験の展開のためにシミュレーションモデルを作成した。モデルとしては、計算時間の短縮化を目指して、マクロモデルとミクロモデルの中間的モデルを採用した。 事故検知のためのニューラルネットワーク(NNと略記)の構造としては、入力層、中間層、出力層から成る単純3層構造、複数の独立3層NNの出力を、新たな3層NNの入力とする構造、生の交通情報と3層NNの出力を混合して、新たな3層NNの入力とする構造の三つを考えたが、シミュレーションから得られたデータによるテストの結果、結局、最も単純な最初に挙げたモデル(単純3層構造)がより精度の高い事故検知を行うことが判明した。この単純3層構造NNについては種々の実験を行ったが、まずシグモイド関数のパラメータは1.0でよいこと、中間ニューロン数は交通需要大(交通容量の70%)の場合5、交通需要中以下(交通容量の70%未満)の場合20とすればよいこと、NNに対する入力交通変量としては交通需要大の場合は交通量と速度の2変量を用いる方が、交通需要中以下の場合はオキュパンシと速度の2変量を用いる方がそれぞれ最も予測誤差が少なくなること等の事実を確認することができた。しかし、入力変量については交通需要レベルに応じて変えるべきではないという観点から、結局、常にオキュパンシと速度を用いるようにした。 開発したNNモデルと従来モデルの中でも最も優れたものの一つである一般化尤度比検定法を用いたモデルとの有効性比較実験の結果は、56のテストケース中4ケースを除いてNNモデルの方がより迅速な事故検知を行うという結果となることを確認した。
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