昨年度はまずヨクロモデルとマクロモデルの中間モデルを用いたシミュレーションプログラムを作成し、高速道路における事故時の交通流態をコンピュータ的に再現するようにした。ついで、このシミュレーションから得られた交通変量データを用い、ニューラルネットワーク(以下、NNと略記)による事故検知モデルの性能テストを実行した。その結果、ネットワークの構造としては、複雑な形状のものがかえって検知精度の点でも計算時間の点でも単純3層のものに劣ること、入力交通変量としては総合的に判断すればオキュパンシと速度を採用することが望ましいことが判明した。 本年度は、まず事故検知手法として新たに学習機能を有するファジィ推論モデルを開発した。従来の推論ルールは、例えば大、中、小といった大まかな状態判別ファジィ変量を用いていたが、開発した方法では、種々の交通需要と事故発生パターン(発生時刻、発生位置)がすべて推論ルールに組み込まれるようになっている。シミュレーションから得られたデータによるテストを行った結果、入力情報に不可避的な観測誤差に対する頑健性という点においては、NNモデルを凌駕することが明らかとなった。渋滞長とインター間所要時間の推定については、衝撃波理論を用いてまず理論解を導き、その値をシミュレーションから得られたデータにより照合するという方法でテストを行ったが、推定精度は全般的にあまり芳しいものではなかった。この原因について詳細に検討した結果、シミュレーションそのものに問題があることがわかり、この時点からミクロモデルによるシミュレーションの再構築を開始したが、時間が年度末に迫っており、研究成果としてまとめるまでには至らなかった。
|