研究概要 |
本研究は欧米で蓄積されつつある交通行動のダイナミック分析手法を新たに交通機関の選好意識(以下SPと略す)の分析に適用し、その時間的な変化の構造を明らかにする。分析にはこれまで我々の研究室で蓄積してきた広島都市圏で建設中の新交通システムに対するSPデータ(1987,88,90)に今回調査予定のデータを加えた4時点のパネルデータを用いる。 本年度は1993年11月、従来と同様に新交通システム、バス、自動車に対するSP調査を広島市北西部の住宅団地で実施した。425世帯に調査票を配布し、420票回収した。その内340票が有効回答であった。90年から93年のパネルの滞留率は60.5%と非常に高く、本年度の調査は成功したものと考えられる。過去3時点のパネルに93年の調査を加えた4時点のパネルは37人と少ないが、88年を除いた3時点のパネルについて見れば、192人となっており、87、90、93年の3年ごとのパネル分析が十分可能となる。 各調査年度の全てのデータを用いて4時点の縦断的な集計を行なうと、交通機関の線択に関するSPは、個人の社会経済属性や利用交通手段の違いにより異なった選好順位を示すことが分かった。また、現在公共交通機関を利用している人や新交通システム駅までのアクセス手段が徒歩の団地に住む人は、時間的に安定して新交通システムを選考する傾向がある。これに対して、現在自動車を利用している人やアクセス手段がバスの団地に住む人は各交通手段の選好割合が時間的に安定しておらず、交通環境や交通サービス要因によって大きく影響することが分かった。
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