研究概要 |
空港の整備計画は,建設主体(政府),空港に機材を乗り入れるキャリヤー及び航空利用者(乗客及び貨物の荷主)の行動が均衡するように計画されることが望ましい。本研究では,上記3者が互いに有する情報に格差があることに着目した。すなわち,政府はキャリヤーの最適行動(乗り入れ空港,使用機材,便数の最適化行動)及び,利用者の最適行動(モード選択,空港選択の最適化)を情報として知っている。したがって,これらの最適行動を前提として空港の位置,規模を最適化するように計画できる。しかし,キャリヤーは利用者の最適行動を知っているものの政府が計画する空港の場所や施設規模が与えられないと自身の最適行動が決定できない。また,利用者は空港の位置(政府の戦略),航路および便数(キャリヤーの戦略)を知らない限り自身の最適化行動が図れない。本研究では,このような情報の格差に起因する最適行動格差をレベルの異なる3者のゲーム行動と見なして最適空港ネットワークを計画するモデルを開発した。本計画モデルでは,政府が空港建設費および空港利用者の時間費用の和を最小化するように行動し,キャリヤーは資材運用によって得られる利益(運賃収入-運用コスト)を最大化するように行動し,利用者は時間費用が最小になるように行動する,という前提で,空港利用市場で3者が均衡する解を発見し,政府の最適戦略(空港の場所,整備規模)とした。モデルは旅客OD分布が与えられている場合の簡単な空港ネットワークに適用され,シュタッケルベルグ均衡解を求めるアルゴリズムを開発し,3者の最適化行動が均衡する場合の種々の傾向について検討を行った。検討の結果,従来の計画法のように,新規空港の場所や規模およびキャリヤーの行動(便数・航路・機材の種類)を仮定した旅客の需要予測は大きく実際と異なること,従ってこの需要予測に基づいた空港の位置の妥当性や規模計画の妥当性ははなはだ疑問であることを指摘できた。しかし,現在の解法では実際規模のネットワークに拡大した場合の解の探索に時間がかかり過ぎること,キャリヤーが複数存在してキャリヤー同士が競争する現実を具体的にモデルに反映できていない点等が課題として残されている。
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