この研究は、一般の人々を対象に広く調査を行い、構造物から受ける感覚的な印象(特に直感または視覚的な印象によって構造物内部の力学をどのように認識しているか)の一般的な傾向を探り、それらを分析することによって、景観論における構造物の力学的感覚の意味を明らかにするものである。 平成6年度の研究においては、札幌地区と沖縄地区においてそれぞれ約300人、総計600人以上の高校生を対象として構造感覚についての大規模な調査を行った。 その調査内容は、これまでの、安心感を感じる橋のライズの調査、支えるというイメージの強い支持形態に関する調査、さらに部材の細長さによる引張・圧縮のイメージ調査などに加えて、トンネル内部の空間認識に関する調査、桁の支点配置についてのバランス感の調査、構造形態の安定性に関する調査などである。これらを統計的に分析しまとめた結果の第1報は1995年2月に論文発表した。札幌と沖縄という離れた2地区で同じ調査をした結果、構造感覚には同じような傾向が認められ、その結果、これまでの調査で得られていた「構造物に対する人の感覚には予想以上に共通点が認められる」ということを地域的にも再確認し一般化することができた。 今年度内はそれらの分析整理をさらに進めるとともに、来年度においては、それをもとにして、人が構造物から受け取る力学的なイメージについてその傾向を明らかにする。さらに、人が構造物を見るときに感じる、構造物内部に発生している物理的な内力についての認識・感覚に注目するという「構造感覚」の立場から、構造物および構造景観を評価する手法を検討するし、それらの研究の結果を総合し、取りまとめて公表する予定である。
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