この研究は、構造に関する力学的感覚を日本国内で広く調査した研究であり、研究の対象とした内容は、構造感覚に関する調査とその分析、図形認識に関する調査とその分析の2つに大別される。 1.構造感覚に関する調査 この調査は、基本的な構造に関して、それが与える感覚的な、特に直感または視覚的な印象の傾向について、一般の人を対象に広く調査し分析を行い、構造景観論における構造物の力学的感覚の意味を明らかにしようとしたものである。 調査は日本の南北の2地域において合計642人を対象にして描画形式のアンケート調査で行われ、検定と分析、検討を行った。 その結果、桁橋のライズ比、張り出し構造の支え方、トンネルの内部空間感覚、梁のスパン割などに関して新しい知見を得ることが出来た。 2.図形認識に関する調査 この調査は、いくつかの図形を対象として、そこから人間が直感的に感じるバランス感の一般的な傾向を探るとともに、そこに認められる見慣れ感覚の程度を明らかにして、それらを分析することを試みたものである。 調査は、紙に描かれたある形の図形の中に印を描き込む形式のアンケート調査で行われ、図形に対する感覚的認識について、4つの図形の図心と上向き方向に関するデータを集計分析して、それぞれについて認識の傾向を明らかにした。 特に北海道の表図と真図を調査の図形の中に加えることで、図形に対する見慣れ感覚を分析的に明らかにすることができ、その度合いを具体的に示すことが出来た。
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