本研究では、時間変化を伴う3次元的を都市大気環境(大気・熱・汚染)の動態を、関東地域を具体的な対象地域とした既存の大規模な野外観測結果とメソスケール数値気象モデル・光化学大気拡散反応モデル等を利用し明らかにすることを目的として、以下の研究を実施した。 まず、既存の数値気象モデルの基礎的な応用とその問題点の整理とその妥当性の検討を行った。数値モデルはブジネスク近似・静力学平衡の局地気象モデルである。3次元的な都市大気環境の数値モデルの運用に際して人工排熱を適切に評価することが極めて重要であるため、関東地域の排出熱量のデータベースの収集・整理をおこなった。現在のところ関東地域での十分に確立された排出熱量のデータベースはないため、本研究ではメッシュベースの排熱量マップを作成した。これらの研究と平行して、都市大気環境の評価のための大気拡散反応モデルの評価と応用を進めた。特に、局地気象数値モデルと光化学反応を含む3次元大気拡散反応モデルのリンクを確立した。これにより、任意の気象条件の再現と、その条件下における大気拡散反応モデルの運用が可能となった。これらのモデルを用いて、現在都市大気汚染として大きな問題となっている、冬期の窒素酸化物汚染の数値シミュレーションを行った。その結果、局地気象条件(混合層発達や海陸風交替)と汚染質の発生源変動のみなく、冬期でも大気反応の効果が重要であることが判明した。以上の数値モデルはすべてワークステーションベースで実行可能であり、様々な気象条件での都市大気環境・汚染の予測が可能となった。
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