地震動による物体のロッキング運動については、百年程前から研究が行われてきたが、復元力持性が負勾配となる非線形振動を取り扱わなければならないために、現在でも完全に解明されていない現象である.本研究の代表者は、以前に左右対称な剛体の運動を解析するコンピュータープログラムを開発し、剛床上の剛体の転倒問題について研究を行い、地震動による物体の転倒条件について提案した. しかし、物体は左右対称でない場合も多く、地震動によって振動する建物内部での物体の挙動を解明することが、コンピューターを始めとする機器・家具などの転倒防止の面から、より重要な問題となっている.このため、左右対称な剛体のみ扱うことができるコンピューター・プログラムを左右非対称の場合にも適用できるように、また、家具などは後方に壁のある場合が多いため、このような場合も解析可能なよう、プログラムを発展させた.このコンピュータープログラムを用いて、正弦波及び地震波入力による物体の転倒について、種々のシミュレーション解析を行い、より正確な転倒条件を導いた.また、左右非対称な物体については、非対称性が強くなるほど物体は転倒し易く、壁に近接しているほど物体は転倒し難いが、物体の幅の0.2倍以上離れると堂のない場合と同様であることなどが判明した.
|