研究概要 |
筋違材では激震時に引張降伏と全体座屈が繰返し生じる。全体座屈は局部座屈を伴い,この局部座屈の生じた位置で破断に至った災害例も報告されている。過去3年間にわたる研究から,この破断は基本的には局部座屈に伴う有効断面の減少と,有効断面に作用する繰り返し高応力が原因と判明したが,定量的にはまだ解明されていない部分も多い。また,昨年度までの研究は,実験が容易で本質的に変わり のない角形鋼管の繰り返し曲げ試験でシュミレートしてきたが,筋違材では,曲げ材とは異なり全断面が引張となることから,筋違材での挙動を把握する必要もあるものと考えた。 この破断に到る現象の力学的究明を目的に下記の〔実験I〕〔実験II〕の二つの実験を行った。また,この実験から,繰り返し応力を受ける鋼材の骨格化曲線に疑問が生じたので,補足的にこの問題を扱う〔実験III〕を実施した。 〔実験I〕筋違材の実験として,減厚した鋼板をプレス成形した山形鋼を用いて,繰り返し圧縮・引張の試験を行った。この実験で筋違材としての挙動を把握するとともに,き裂の発生に到る箇所のひずみをノギスで計測し,当該箇所のひずみ履歴を得た。 〔実験II〕き裂の発生した箇所での応力履歴を得るために,上述のひずみ履歴で制御する素材の引張・圧縮繰返し実験を行った。実験には変位制御試験機を用いた。 実験I・IIから,き裂発生箇所の応力履歴・吸収エネルギーを算出したところ,き裂の発生が素材の持つ伸び能力の限界,言い換えると吸収し得るエネル ギーの限界で与えられることが判明した。 〔実験III〕では,一般的な鋼材で,繰り返しにより吸収できるエネルギーの限界がどのように変化するを把握するために行った。この研究は次年度以降へと継続される。
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