研究概要 |
圧縮力と引張力を繰り返し受ける鋼部材の破断に関する実験を行った。高軸力を受ける軸力部材は,圧縮力により局部座屈を生じることが一般的で,局部座屈が生じた部材では,その後の引張力の作用により,繰り返しの早期に破断に到ることがある。本研究は,この様相を明らかにすることを目的とした。 本研究は実験研究で,断面形状,幅厚比および熱処理の有無を主な変数とした。断面は,鋼管,角形鋼管およびH形鋼で,細長比は一定とした。試験体総数は20体である。載荷は,試験体の両端に設けられたピン支承を介して,変位制御の正負交番の軸力として与えた。破断の先行現象である亀裂発生箇所の挙動を把握するために,当該箇所の歪み履歴をレーザー変位計を用いて,新たに開発した方法により測定した。 実験結果は,荷重-伸縮量曲線,亀裂発生箇所のひずみ履歴およびその分布,破断に到る迄の吸収エネルギー等として整理することができた。引張耐力は,破断に到る迄に,全断面降伏に相当する荷重に達することはなかった。このことは,与えた変位履歴の制御方法にも依存すると考えられるが,筋かいなどでは,一般に,引張耐力は降伏軸力を取りえないものと考えられる。亀裂発生箇所の歪みは,荷重履歴の進展とともに,圧縮側に偏って行くが,その値は数十%と大きく,また,引張時に引き戻される量も極めて大きい。このことから,亀裂発生の要因は,当該箇所に極めて大きい軸方向応力が正負交番に作用するためと考えられる。亀裂の発生に到るまでの荷重履歴のサイクル数は,断面ごとにほぼ一定で,熱処理の有無などの影響を受けない。また,幅厚比の影響は若干認められるがその差は小さい。 次年度に細長比を変数とする実験を行って,本研究と併せて纒めるつもりである。
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