1.赤外線放射カメラを用い、典型的な「ストリートキャニオン」における表面温度分布の実態調査を行った。幹線道路の交差点に面する建物の屋上にセンサを設置し、道路周辺の熱画像を時系列で収録した。気象条件とともに急激に変化する表面温度の状況をとらえるため、5分おきに熱画像を収録し、光磁気ディスクに転送した。また、同時に交通状況の収録のため、ビデオカメラを作動させた。気象条件として気温、相対湿度、風向、風速、水平面全天日射量を観測した。ストリートキャニオンの熱収支シミュレーションを行うための基礎データを収録できたと考える。 2.「ストリートキャニオン」における伝熱計算を精度よく行うためには、周辺建物による日影や道路の高度、傾斜等の精密なデータが必要となる。このため、CD-ROMにより市販されているGISデータを伝熱モデルに組み込むためのオリジナルソフトウェアを、本専攻のワークステーション上で開発し、整備した。ストリートキャニオンの全表面において受ける日射量および大気放射量についてはレイトレーシングを応用し、最小限の反復計算を行うことによる実用的な手法を提案した。 3.開発したソフトウェアにより、ストリートキャニオンの熱収支シミュレーションを行い、熱画像の作成を試みた。作成した熱画像は赤外線放射カメラによって収録した熱画像の特徴を再現した。ただし、いくつかのパラメータについては今年度さらに検討し、熱収支シミュレーションの推定精度、および適用限界について明確にする予定である。
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