本年度は、まず4月に建築史学大会において「西欧における日本建築のイメージ〜マルコ・ポーロから19世紀末まで」と題して、文献の上で西欧において日本建築がどのように記述され、実際に建てられた日本館にどのような意匠が施されたかについて口頭発表した。以後の研究は、そこでの発表をベースにして、項目別・時代別の論文化、活字化であり、資料収集ならびに建築意匠の分析を進めていった。文献解釈においては、イエズス会史料、旅行記を頼りに日本建築に関する内容の分析に努めた。西欧において日本建築のイメージ形成に大きな影響を与えたのは、オランダ人モンタヌスの著作『遣日使節紀行』(1669)であった。同文献の分析を徹底的に行い、その成果を1993年度日本建築学会関東支部大会で発表した。モンタヌスの著作に掲載された図版はファンタスティックなものであるが、城閣、宮殿、宗教建築に分類すれば、意匠的に一応のジャンル分けがなされていたこと、そこで濃厚に出された黄金のイメージは、江戸期の日本建築が装飾の全盛期を迎えていたことと関係し、時代の有する気配が西欧人によって増幅された結果として捕えられるという結論を導いた。また、日独建築交渉史の重要な人物エンデ&ベックマンの日本の官庁集中計画についての論考を発表した。 なお、18世紀のドイツに集中して建設された日本館の分析、19世紀末のベルリン動物園の諸施設に現れたジャポニスムの影響については、ほぼ資料の収集を終え、平成6年度にこれらの成果を日本建築学会(大会・論文報告集)を中心に発表していく。
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