本年度は、9月の日本建築学会大会において「18世紀末のドイツに建てられたモンビジュ宮の日本館について〜シノワズリ-のなかの日本建築のイメージ」と題する学術講演を行った。同研究によって、モンビジュ宮の日本館が西欧建築史において中国と日本を差異化できた最初の作品であること、日本のモティーフが同時代のケンペルの著作ではなく、むしろ17世紀のモンタヌスに遡れることを明らかにした。 3月の日本建築学会関東支部研究報告においては、「1660年代の西欧における日本建築のイメージについて」と題する論文を発表した。1660年代は、オランダ人カロンやモンタヌスの日本関係の著作の翻訳によって、他の西欧諸国に日本建築が紹介された時代であった。しかし、掲載された図版(本邦初公開の図を含む)の意匠については各国でイメージにかなりな開きがあり、日本建築は言葉の上においてのみ共有されていたことを明らかにした。さらに、ドイツにおいて日本建築のイメージ形成に影響を与えた人物にE.フランツィシがいたことを指摘した。 日独の建築交渉史において重要な建築家エンデ&ベックマンについては、8月にドイツで資料調査を行い、新たに現存建築と多数の図面を収集した。そこで得られた成果は、3月の日本建築学会関東支部歴史意匠部会のシンポジウム「蘇る赤レンガ棟〜法務省旧本館の復原改修工事」で発表した。 また、これまでの19世紀を中心とした西洋建築史研究の成果を踏まえて『西洋建築様式史』を著わした。これで本研究に関する骨子は出来上がった。今度とも、研究を継続させて日本建築学会を中心にさらに論文を発表していく。
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