研究概要 |
金属間化合物TiAlは新しい軽量耐熱材料として、近年、集中的に研究されているが、これは少量のTi_3Al相を含むTiAl/Ti_3Al二相化合物についてであり、その主構成相であるTiAl単相化合物についてはあまり研究が進んでいるとは言えない。単相のTiAl化合物が得られると考えられているTi-56at%Al組成のTiAl化合物の回析図形にそのL1_0型構造では説明のつかない散漫散乱が観察されることを最近発見し、本研究でその原因となる欠陥構造の解明を試みた。この散漫散乱は〈001],〈111],〈211]入射の回析図形には観察されるが、〈100],〈110],〈011],〈112]入射の回折図形には存在しない。Ti-54at%Alの単相化合物にも同様の散漫散乱が同様の強度で観察されるが、Ti-50at%Al,Ti-52at%AlのようにTi_3Al相と共存するTiAl相では散漫散乱は観察されない。このことは凝固時にα相から析出するγ相には散漫散乱は観察されず、融液から直接晶出するγ相にのみ散漫散乱が観察されるということを意味する。当初、この散漫散乱は、不純物として存在する酸素と深く関係しているのではないかと考えていたが、Ti-56at%Alにつき酸素含有量が300,500,800wt ppmの試料を用意しその散漫散乱の強度を比較したところ、余り大差がないことが明かとなった。また、散漫散乱が観察される〈001],〈111]方向から原子尺度で高分解能電子顕微鏡観察したところ、その光回折図形にも散漫散乱が観察されることから、その原因となる欠陥構造は特定の弾性波のソフト化などに関連した動的なものではなく、静的に安定なものであることが明かとなった。しかし、その高分解能像にはデメイン構造のようなものは観察されず、例えばTiとAl間やTi,Al,O間の短範囲規則化などの原子尺度での欠陥構造が散漫散乱を生じしめていると考えられる。今後、上記の知見をもとに原子尺度での構造モデルを構築し、4軸X線精密構造解析を行い、その欠陥構造を突き止めたい。
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