有機結晶でアルカリ金属をドーピングすることにより超伝導性などの金属的性質を示すC_<60>結晶の結晶欠陥を制御するためにいくつかの実験を行ったので結果を以下にのべる。 1.特に転位の特性を調べるためにマイクロビッカスにより硬さの温度依存性についての実験を行った。その結果以下のようなことが分かった。 (1)硬さは260K付近の相転移に対応して飛びが生じた。すなわち、温度が低下するにつれて硬さは硬くなり、260K付近で急激な硬さの上昇が生じた。このことは相転移に伴う結晶構造の変化に由来するものと結論された。 (2)温度が上昇するにつれて硬さは減少するが、室温以上になると硬さは増加し370K付近で最大となり、再び硬さは減少した。この硬さの異常はC_<60>結晶中の転位と不純物との相互作用の可能性が強い。その一つはC_<60>結晶は酸素に対して敏感であり、物性が酸素の影響を受けることが良く知られている。それゆえ、酸素による転位の固着がこの370Kで最大になり硬さが異常に増加したものと考えられる。もう一つの可能性はC_<60>以外の高次フラーレンが不純物として残りそれと転位との相互作用によるものである。これらの可能性を明らかにするためにさらに実験を行う必要がある。 2.C_<60>結晶の成長転位を制御し、その完全性を評価するためにX線トポグラフによって転位の観察を行った。結果はまだ転位密度が多くここの転位は分解されていないが転位の集団は確認されるに到った。
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