二つの異なった基本周期を持つサブシステムが互いに入り組んで出来ているような結晶を複合結晶(コンポジットクリスタル)と呼んでいる。Nd-Fe-B、B-rich相は、NdのサブシステムとFeのサブシステムが互いに入り組んで出来ており、それぞれが変調を起こしてできているコンポジット結晶である。 組成比1:4:4当たりに現れるNd-Fe-Bコンポジット経晶のBの影響について調べる目的で試料の作製から始めた。試料の作製は、アーク炉で溶解しただけでは反応が十分に進まず、約1000℃の高温で長時間(約1週間)の熱処理が必要であることがわかった。コンポジット結晶の生成範囲に及ぼすBの影響を知るために、NdとFeの比を1:4に固定し、Bの濃度を変化させて試料を作製し、その粉末X線回析図形をしらべた。その結果、Nd-Fe-Bの比は1:4:4からわずかにずれ、1:4:3.90-3.95辺りにところで、そのほかの化合物(不純物)の生成が少ないことがわかった。このことから、1:4:3.90-3.95の付近のごく狭い領域でのみ、コンポジット結晶が生成することがわかった。また基本構造の格子定数の変化も調べてみたが、a軸、c軸とも濃度による変化は殆どないことがわかった。このことは生成範囲が狭いことと矛盾しない。変調構造の周期とB濃度の関係については現段階では、まだよくわからない。さらに研究を進め、コンポジット結晶の変調構造の周期と生成条件について知るため、今後はNdとFeの濃度も変え、Bの影響を調べる必要がある。また、従来この構造の近似構造が1:4:4で記述されていることと、今回の結果は相いれないところがある。この観点から結晶構造の見直しも必要になって来ると思われる。
|