不均質多相系であるセメント系材料において絶縁破壊試験が機械破壊強度、信頼性の代替評価法としての確立の可能性につき検討を行ない、機械強度がマクロな機構の分布状態で決定される化学的組成が単純なセメント材料においては、絶縁破壊強度が機械破壊強度、信頼性を予測する代替評価法として利用できる可能性があることが示された。 ポルトランドセメントペースト硬化体およびモルタルにおける電気伝導度と破壊強度の関連性につき検討を行ない、反応性骨材(パイレックスガラス)NaClを混入させたモルタルの電気抵抗が材齢4日以上で異常に低い電気伝導度を示すことが明らかとなった。硬化開始後30日後の組織観察、EPMA観察により、NaCl添加の反応性骨材を用いたモルタルにおいてアルカリ濃度の異常に高い部分が確認された。反応性骨材NaCl混入モルタルにおいて、硬化開始後365日後の組織観察により、アルカリ骨材反応の兆候と見られる白色滲出物が確認されている。ポルトランドセメントが主成分のモルタルの硬化過程において、NaClの混入がアルカリ骨材反応を誘発することが知られており、この現象の評価が、アルカリ金属等の不純物混入によるアルカリ骨材反応の事前予知に有効であることが確認され、セメント硬化過程における伝導度変化によりアルカリ骨材反応の事前予知の可能性が見いだされた。 応力による強度のばらつきの評価を破壊歪みにより代替えを試み、歪み速度を一定にした場合、歪みが生じてから破壊までの時間を測定し、これによる強度分布の代替えを試みた。また多数の試験片の歪みを同時に増していった場合の試験片の導電率をモニタリングすることで破壊点の特定が可能となる。セメント硬化体は含有水分、浮遊イオンに由来すると考えられる電気導電性をもつことからこの手法はセメント系材料の強度分布の簡便な測定法としても応用できる。
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