研究概要 |
平成6年度の主要な研究項目は前年度に試作した超高温DTAの検出感度及び検出温度精度の向上とこれを用いたAlN-Y_2O_3系での液相生成温度のさらに精密な測定,高純度窒化アルミニウム粒界部を液相が拡散する挙動の観察を行った.これらを踏まえて窒化物-酸化物系における液相の生成におよぼす窒素の役割を検討した. 昨年度自作した超高温DTA(最高作動温度2200℃)はおおむね所期の性能を示したが,1700℃を越えるとノイズが激しく,測定温度の信頼性の点から更なる工夫が必要であった.まず直流電源の制御方式を工夫し,ノイズとなりうる急峻な制御電流の変化を極力抑えた.また,BN製のDTAユニットの構造をヒーターから蒸発したカーボンによる絶縁性低下の影響を受けにくいようにした.これらの工夫と昨年度から続けている標準試料を用いた定期的な熱電対の温度校正を併用してより信頼性のある液相生成データを得た.Al_2O_3-Y_2O_3-AlN系について液相生成温度を再測定した.その結果,この系には化合物は生成せず,AlNとAl_2O_3-Y_2O_3系の化合物の間に共晶系の状態図が予想され,液相生成温度は1686℃まで低下した. また,Y_2O_3を添加して焼結した後,炭素還元雰囲気中で長時間処理してY_2O_3および不純物酸素量を大幅に低減した試料にトレーサー元素としてSiO_2を添加したAl_2O_3-Y_2O_3系の化合物を再拡散する実験を行い,その拡散経路を明らかにした.不純物酸素量が多いAlNを用いた同様な実験と比較して拡散速度は大幅に低下したが,やはり粒界部にAl_2O_3-Y_2O_3系の化合物が残留していた.これらの結果はAlNと粒界相が共晶系の振る舞いをすると考えると理解でき,従来AlNは液相生成に直接関与していないと考えられたこととも符合する.
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