研究概要 |
ペロブスカイト構造(M(1)M(2)X_3:M(1)M(2)は金属、Xは陰イオン)を持つ化合物には興味ある誘電特性、磁気特性、電気特性を示す物質が多い。しかし、ペロブスカイト構造を持つ硫化物は報告が少ないことから、本研究では特にリチウムを含む複合ペロブスカイト硫化物を中心に各種化合物の合成を試みた。平成5年度はLiMnS_3,LiWS_3,LiCrs_3,CuMnS_3,CuWS_3,CuCrS_3等、の合成を試みた。合成は主に所定の混合比の元素(リチウムの場合はLi_2Sを出発原料とした)を石英管中に真空封入し、これを600〜800℃に加熱する方法によった。しかし、いずれの系においても、M(1)M(2)S_3の硫黄組成を持つ化合物は得られなかった。そこで、平成6年度には硫黄組成を変えた三元系硫化物の合成を行った。Cu-Cr-S系では硫化物スピネルCuCr_2S_3が得られた。これから銅をリーチングにより一部除去した化合物はリチウム二次電池正極として働き、50Wh/kgの放電エネルギー密度を示した。また、Li-Mn-S系では、まだ単離はされていないが、含リチウム硫化物スピネルLiMn_2S_4を得ることができた。これは、現在リチウム二次電池正極として注目されているLiMn_2S_4と同様の組成、構造を持ち、良好な正極性が期待される。また、岩塩型構造を有するMnSのマンガンイオンを一部リチウムが置換したLi_xMn_<1-x>S固溶体の均一領域が0<X<0.27の範囲で得られた。Xの値の増加とともに、格子定数が減少し、また半導体であるMnSの比抵抗(ρは室温で、およそ10^<-6>Ω・cm)が10^<-2>Ω・cm(X=0.2,20℃)まで低下した。LiMn_2S_4およびLi_xMn_<1-x>Sはこれまでに全く報告のない新化合物である。
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