炭化ホウ素(B_4C)の出発原料として、できるだけB/C比が高く、重合用の不飽和二重結合を有するアリルデカボラン(C_3H_5B_<10>H_<13>)を選択した。アリルデカボランをラジカル開始剤を用いて種々の条件で重合し、粘性液体を得た。重合生成物の分子量は、重合時間、温度に依存しており、高速液体クロマトグラフ(GPC)により分析したところ、110℃、3時間の条件で分子量1600の粘性重合生成物が得られることが明らかとなった。すなわち、アリルデカボランのラジカル重合の条件選択により、B_4C前駆体としてのプロセシングに必要な分子量や粘度の制御が可能となった。この前駆体の熱分解過程を示差熱分析、赤外吸収スペクトル、X線回折法により分析した。前駆体を熱処理すると、200℃付近から赤外吸収スペクトルによるBH伸縮振動が減少しはじめ、400℃でほとんどの吸収が観察されなくなった。この生成物はX線回折において回折線は観察されず、非晶質であった。この非晶質生成物を700から1800℃までの条件でアルゴン気流下で熱処理すると、1600℃以上でB_4Cの回折線が観察された。 以上のように、アリルデカボランを用いて、有機溶媒に可溶で、繊維、薄膜などの形状賦与が可能であるB_4C前駆体を調製することができた。さらに、この前駆体は炭化ホウ素に変換できることが明かとなった。今後、さらに前駆体の合成条件を検討し、重合体の三次元構造やB/C比などを制御して、B_4C材料の前駆体としての性質をより最適化する必要がある。
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