研究概要 |
無機高分子を前駆体(プレカーサー)として、溶融紡糸、不融化、焼成の工程で得られるプレカーサーセラミック繊維の不活性および酸化性雰囲気中、1300°〜1800℃の環境下における特性や酸化機構を調べた。それらの研究実績を以下に示す。 (1)上記の繊維を酸素雰囲気中1000°〜1500℃の温度範囲で酸化反応により、厚さの異なる酸化皮膜を繊維表面に形成させて、アルゴン中1300°〜1800℃の温度範囲で熱天秤を用いて質量変化曲線を求め、さらに引っ張り強度、ヤング率を求め、電子顕微鏡における微細組織観察を行い、酸化皮膜の高温特性に与える効果を調べた。その結果、酸化は2次元界面減少型の拡散律速で整理でき、酸化皮膜に存在する微細孔を通してのガス拡散によって律速されているが、繊維表面に形成された酸化皮膜は高温熱分解反応を抑制し、酸化層が薄いほどその抑制効果は大きく、そして繊維内部の構造はアモルファスから僅かに結晶化した状態で、高い引っ張り強度、ヤング率を保持していた。また、酸素含有量が低い繊維ほど、より薄い酸化層皮膜において高温熱分解抑制効果が認められた。 (2)酸素含有量が異なる3種類のプレカーサーセラミック繊維(6,13,18mass%酸素)を用いて、アルゴン中、1300°〜1700℃の環境下において、繊維特性が調べられた。酸素濃度が低いほど熱分解速度が極端に遅くなり、高温における熱分解反応に伴うSiO、COガス発生が抑制され、高い引っ張り強度、ヤング率を保持していた。また窒素雰囲気中でも高温特性が調べられ、1500℃以下では窒素雰囲気の方が熱分解が抑制され、高い強度を有していた。繊維表面に窒化物の形成が熱分解抑制効果と高強度をもたらしたと考えられる。
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