プレカーサーセラミック繊維は無機高分子を前駆体(プレカーサー)として、溶融紡糸、不融化、焼成のプロセスで作られている。この繊維はアモルファス構造の長繊維で耐熱性があり、高強度を有している為、セラミックス系複合材料の強化材として期待されている。また、この繊維は製法上の理由から酸素を多量に(10wt%以上)含有しているが、最近、放射線架橋反応法が導入され、酸素濃度が1wt%以下の繊維が作られるようになった。本研究ではこの繊維の不活性および酸化性雰囲気中、1300°〜1800℃の環境下における特性や酸化機構及び高温熱分解機構を本科学研究費補助金の設備備品費で購入した超高温炉を用いて調べた。 本研究の結果、不活性ガス雰囲気中では、酸素濃度が低いほど熱分解速度が極端に遅くなり、高温における熱分解反応に伴うsio、coガス発生が抑制され、高い引張り強度、ヤング率を保持していた。特に窒素雰囲気中1500℃以下では熱分解反応が抑制され、高い強度を有していた。繊維表面に窒化物膜の形成が熱分解抑制効果と高強度をもたらしたと考えられる。 一方、酸化反応は2次元界面減少型の拡散律速で整理でき、酸化皮膜に存在する微細孔を通してのガス拡散によって律速されているが、繊維表面に形成された酸化皮膜は高温熱分解反応を抑制し、酸化層が薄いほどその抑制効果は大きく、そして繊維内部の構造はアモルファスから僅かに結晶化した状態で、高い引張り強度、ヤング率を保持していた。また、酸素含有量が低い繊維ほど、より薄い酸化層被覆において高温熱分解抑制効果が認められた。 これらの研究成果は、セラミック繊維やセラミックス系複合材料の発展に大いに役立てることができものと確信している。
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