本研究では、融液あるいは溶液から超急冷法、融液急冷法、ゾル-ゲル法などの種々の手法を用いて、高イオン伝導性、光応答性等を有する機能性結晶を析出させることによって新しい結晶-ガラスあるいは結晶-ゲル系の複合体を合成し、これらの特性評価を行うと同時に、結晶およびアモルファス界面を中心にその組織構造を明らかにしたものである。得られた成果を以下に示す。 (1)AgI過飽和の融液を双ローラーで超急冷することにより、α-AgI結晶とAgI-Ag_2O-M_xO_yガラスから成る複合体が得られた。電界放射型走査電子顕微鏡を用いて観察したところ、α-AgI常温凍結複合体には、数十nmの粒径を持つα-AgI微粒子がガラスマトリックス中に均一に分散して存在することがわかった。 (2)ヘテロポリ酸やビオローゲンのようなフォトクロミック物質をゾル中にドープしゲル化させることにより、フォトクロミック特性を示す有機-無機複合体を作製した。ドーパントの還元によって生じる着色種は、マトリックスのゲル化に伴い急激に安定化することがわかった。 (3)様々な水化物を持つブレンステッド酸をドープしたプロトン伝導性複合シリカゲルを作製した。これらのゲルは、室温において、10^<-4>〜10^<-1>Scm^<-1>と高いプロトン伝導性を示した。 (4)機能性有機分子含有複合ゲルの生成過程における分子の周りの局所粘度の変化を調べるために、粘性プローブとして知られるオ-ラミンOをドープした様々なゲルの発光挙動を、ゾル調製直後から追跡した。ゲル化点の前後では局所粘度はほとんど変化せず、乾燥段階で急激な増大のみられることがわかった。
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