新しい機能を付与する目的で、異種の高分子を単純に、あるいは反応を伴いながら溶融混合する方法は従来よりよく行われている。しかし、溶融が難しかったり、融点が大きく異なる高分子についてはこの方法は採用ができないので限界がある。本研究では、このような欠点を克服するために、固体の破砕や微粉化に伴う分子鎖切断とラジカル発生を応用して、固体反応に基ずいて新しいコンセプトによる複合材料の創成とその構造および物性の解明を行うことを目的とした。 実験は、まず高分子同士の固体反応を目指して、超高分子量ポリエチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリテトラフロロエチレンのそれぞれの固体粉末同士を混合し、窒素雰囲気中でボールミルによる粉砕混合を最長で1000時間まで行い、その途中の段階で適宜混合試料を取り出しながら形態および構造の変化について観察を行った。また、無機物との複合を考えてガラス繊維とポリテトラフロロエチレンについても同様の試験を行った。その結果、単純混合では到達できない粒子直径までの混合が見られたが、最終的には高分子同士の混合では圧縮圧延により凝集化が激しく、いわゆるナノオーダまでの混合は困難であり、用いる高分子粉体の形状と機械的性質が大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。また、ガラスと高分子では圧延されたサブミクロンの交互層状構造物が見いだされ、新しい構造の材料の生成が見られ、この構造解析を今後行う予定である。
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