研究概要 |
セラミック-セラミック、セラミック-金属の複合体において、その間の熱膨張の違いが大きい場合、クラックの発生、接着の不完全性などの問題が生ずる。そのため最近では、両成分の割合を徐々に変化させて混ぜ合わせ、熱膨張を傾斜化する方法が検討されている。本研究では、その一つの方法として、組成により異なる熱膨張を示す固溶体結晶を用いて、一つのセラミック内部において固溶体組成を変化させ、熱膨張係数がその組成に応じて傾斜化する材料を作製する事を検討した。昨年度は、金属に匹敵する高い熱膨張係数を有するネフェリン(NaAISiO_4)結晶を用いて、Naイオンの位置をLi及びKイオンで置換固溶する事により、一つのセラミック中にNa_<1-x>Li_xAISiO_4(x=0-0.15)及びNa_<1-x>K_xAISiO_4(x=0-0.43)の連続固溶体を形成し、その熱膨張係数がそれぞれ16-12、16-18×10^<-6>/℃まで変化する傾斜機能材料を得た。本年度は、強誘電性のペロブスカイト型チタン酸鉛系固溶体結晶を用いて、同様の連続固溶体組成による方法により、熱膨張以外の性質を傾斜化することを試みた。 Pb(Zr_xTi_<1-x>)O_3の種々のxの形成の試料を作製し、その中から特性の異なる二つを選び、層状に成形して焼結した。焼結過程において、界面でZr及びTiが拡散し,傾斜相が形成された。傾斜相の確認は、EPMA及びX線回析等を用いて行った。得られた試料の比誘電率の温度依存性を測定した結果、単一相ではキュリー点において異常を示すのに対し、傾斜相を含む試料では、それぞれの単一相のキュリー点の中間の温度で極大を示すが、その変化は単一相に比べて穏やかになり、温度に対する依存性が減少する事が分かった。
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