セラミック-セラミック、セラミック-金属の複合体において、その間の熱膨張の違いが大きい場合、クラックの発生、接着の不完全性などの問題が生ずる。そのため最近では、両成分の割合を徐々に変化させて混ぜ合わせ、熱膨張を傾斜化する方法が検討されている。本研究では、その一つの方法として、組成により異なる熱膨張を示す固溶体結晶を用いて、一つのセラミック内部において固溶体組成を変化させ、熱膨張係数がその組織に応じて傾斜化する材料を作製する事を検討した。作製方法としては、異なる二つの組成の成形体を層状に重ねて焼成する事により、焼結と同時に界面において構成成分を拡散させる方法を用いた。傾斜相の確認は、EPMA及びX腺回折を用いて行った。 平成5年度においては、金属に匹敵する高い熱膨張係数を有するネフェリン(NaAlSiO_4)結晶を用いて、Naイオンの位置をLiイオン及びKイオンで部分的に置換固溶する事を行った。その結果、一つのセラミック中でその組成がNA_<1-x>Li_xAlSiO_4ではx=0-0.15、Na_<1-x>K_xAlSiO_4ではx=0-0.43まで変化する連続固溶体が形成された。即ち、その熱膨張係数がそれぞれ16-12、16-18×10^<-6>/°Cまで変化する傾斜機能材料が得られた。 平成6年度においては、熱膨張以外の性質を傾斜化させる事を試み、強誘電性のペロブスカイト型チタン酸鉛系固溶体結晶(Pb(Zr_xTi_<1-x>)O_3)を用いて、誘電率の変化を測定した。その結果、単一相ではキュリー点において異常を示すのに対し、傾斜相を含む試料では、それぞれの単一相のキュリー点の中間の温度で極大を示すが、その変化は単一相に比べて穏やかになり、温度に対する依存性が減少する事が分かった。
|