プラズマエッチングとプラズマ重合の同時制御による金属-高分子組成傾斜膜の試作

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05650661
• 研究機関: 北九州工業高等専門学校
• 研究代表者: 原口 俊秀 北九州工業高等専門学校, 化学工学科, 教授 (00038598)
• 研究分担者: 山田 憲二 北九州工業高等専門学校, 化学工学科, 助教授 (80101179)
• キーワード: プラズマエッチング / プラズマ重合 / ステンレス鋼 / 組成傾斜膜 / 表面処理

研究概要

本年度はステンレス鋼板表面のプラズマエッチングとその表面へのプラズマ重合膜の推積を分離して実験した。エッチング装置では電力印加側電極内部に水冷しながら3000ガウスの永久磁石を置き、これを対極の接地側電極との空間に放電方向と垂直に磁場が構成されるようにした。このことにより、鋼板試料を印加側電極表面に固定し、さらに電極間にプラズマをほぼ完全に閉じこめることができた。エッチングガスを水素と窒素の混合ガス(混合比1:1)とし、ガス供給方式、電極間距離、放電出力放電圧力及び処理時間を種々変化させながら高周波グロー放電によるエッチング処理を行った。エッチングの効果は試料のESCAによる表面分析で評価した。その結果、次のことが判明した。(1)水素-窒素混合ガスのグロー放電で金属のエッチングが可能である。(2)試料鋼板の構成元素は鉄、クロム、ケイ素、炭素、酸素等であり、試料表面に存在する酸化物皮膜には上層部にケイ素酸化物と鉄酸化物が、皮膜全体にクロム酸化物が存在する。(3)プラズマエッチング後の鋼板表面は非常に活性が強く、大気中の酸素と瞬時に反応し、再び金属酸化物皮膜が形成される。(4)水素-窒素混合ガスのグロー放電により、鋼板表面の酸化物皮膜を1分間で除去するための最適条件は電極間距離10mm,放電出力300W,放電圧力1torrであった。
プラズマ重合は通常のベルジャー型装置内で行い、水平に配置した下側の接地電極上にエッチング処理済みの試料鋼板を置いた。メタンガスをモノマーとし、放電圧力0.1torr、放電出力100Wで放電時間を変化させて重合膜の厚さを調製Eた。ESCAによる深さ方向の表面分析により、3分間の重合処理で1000〓以下の炭化水素系の重合膜が形成されていることが認められた。重合膜の接着テストと組成傾斜膜の合成実験が本年度の課題である。

研究成果

• [文献書誌] 原口俊秀: "金属表面のプラズマエッチングに関する研究" 北九州工業高等専門学校研究報告. 26. 93-99 (1993)
• [文献書誌] T.Haraguchi: "Application of Hollow Fiber Modified by Plasma-Graft Polymerization to Rare-Farth Elements Extractor" Proceeding of Symposium on Plasma Science For Materials. 6. 119-124 (1993)
• [文献書誌] 畑中千秋: "プラズマ開始重合によるリパーゼの固定化とその活性評価" 化学工学論文集. 19. 533-536 (1993)
• [文献書誌] 後藤宗治: "界面活性剤被覆リパーゼを用いたグリセリドのエステル合成反応" 化学工学論文集. 19. 1195-1198 (1993)
• [文献書誌] 井手俊輔: "プラズマ開始重合法により合成したポリアクリル酸による希土類元素イオンの級、脱着" 石油学会誌. 36. 334-337 (1993)
• [文献書誌] 井手俊輔: "合成ポリアクリルアミドによる希土類元素の吸、脱着" 分析化学. 42. 45-48 (1993)
• [文献書誌] 原口俊秀: "文部省大学共同利用期間 放送教育開発センター" 高専用教材「新素材IV 複合材料編」. 92 (1993)
• [文献書誌] 畑中千秋: "セルロース中空糸への酵母の固定化とそのバイオリアクターへの応用" 北九州工業高等専門学校研究報告. 26. 107-112 (1993)
• [文献書誌] 山田憲二: "W/Oエマルション系におけるポリアクリルアミドマイクロカプセルの合成" 北九州工業高等専門学校研究報告. 26. 125-130 (1993)
• [文献書誌] 井手俊輔: "プラズマ開始重合樹脂の希土類吸着剤への応用" 北九州工業高等専門学校研究報告. 26. 155-163 (1993)
• [文献書誌] 幡手泰雄: "高分子ミクロスフェアの帯電特性に及ぼす表面形状の影響" 鹿児島大学工学部研究報告. 26. 39-45 (1993)