研究概要 |
強度-延性バランスを兼ね備えた高強度薄鋼板であるTRIP(変態誘起塑性)現象を活用した残留オーステナイト(γ_R)→α^--マルテンサイト変態付与のα+ベイナイト+γ_R複合組織鋼(r_R=15,6%)、固溶・析出強化したIF鋼および焼入れ-焼きもどし鋼の3種類の強化鋼板について、初年度は薄鋼板現寸法(厚さ1.1mm以下)を用いた強度-延性・靭性および環境強度評価のための微小試験片法を確立させ、以下の成果を得た。 1.本研究費により以下の3種類の環境制御下の微小試験片材料試験装置を作製することができた。 2.77K〜室温、環境雰囲気、電気化学制御で一定ひずみ速度下の微小引張試験片(平行部2.2x10mm、厚さ0.3mm)を用いた試験が可能となった。 3.0.7mm角x20mm微小試験片を用いた衝撃試験機および10mm角x0.5mm厚さの小型パンチ(SP)試験機により、延性-脆性遷移曲線を測定して、強化組織の異なる薄鋼板のDBTT、上部棚エネルギー、破面遷移およびワイブルプロットによる破壊の統計的評価を行い、脆性を支配する因子を検討する準備ができた。 4.Cu-IF鋼の時効析出硬化を中心にしたアノードおよびカソード分極曲線を測定し、複合組織の電気化学的変化は不動態維持電流密度および不動態化電位に大きく反映されることがわかった。 5.複合組織鋼におけるγ_R組織をナイタールエッチング+テンパーカラー着色法、ひずみ誘起マルテンサイト組織を磁気コロイド法、水素トラップサイトをトリチウム電顕オートラジオグラフィ法によりそれぞれ可視化させて定量画像解析ができるように準備した。 6.以上に得られた基礎的知見と準備をうけて、次年度は研究課題を計画どおり展開することができる。
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