研究概要 |
本研究は、β型チタン合金に関して侵入型不純物元素酸素、窒素、水素、炭素の溶解・加工工程における挙動、時効、機械的性質に及ぼす影響、破壊機構に果たす役割の解明からなっている。平成5年度における本研究の結果、侵入型不純物元素の内酸素,窒素,炭素に関しては、バルクの含有量は溶解原料および溶解時の雰囲気制御により決定され、内部への拡散は少ない。しかしこれら元素の内水素は、他の元素とは異なった挙動をすることが明らかとなった。すなわち、生産工程中酸洗のみならず冷間加工においてもバルク内に取り込まれバルク内濃度が上昇する。これはβ相に対する水素の溶解度が大きいことが要因と考えられ、β型チタン合金に特有の性質である。水素はβ相安定化元素でありβ型チタン合金のβ相からα相への相分解を著しく遅らせることが明らかとなった。代表的実用β型チタン合金Ti-15V-3Cr-3Sn-3Alの母相であるβ相は、常温においても水素の固溶度が大きく、通常使用される材料中には数10〜100ppm程度の水素が含まれている。また、本合金では、合金中の水素量が100〜1000ppmの間では、水素脆化は認められなかった。破断時に放出される水素ガスの量が他の金属材料より多いことが確かめられた。これは、β相が高い水素の固溶限を持つためである。超高真空中加熱による脱水素処理を行った試料の力学的特性値から通常本材料に含まれる水素量でも変形破壊時に延性を低下させている。しかし、その機構に関しては明確にすることはできなかった。今後、変形・破壊に及ぼす水素の役割および時効組織に及ぼす影響をさらに詳細に明らかにすることによりβ型チタン合金の組織制御法の確立およびその結果として力学的特性を改善することが可能と考えられる。
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