研究概要 |
セラミックスは高温においても化学的に安定であることが多いが、反応条件によってはかなり容易に腐食を受けることが知られてきた。セラミックスの溶融金属脆性については、これまで巨視的耐食性に関する研究は行なわれてきたが、表面から数ミクロン程度の腐食反応に注目した微視的耐食性に関する研究はほとんど行なわれていない。燒結助剤を含むセラミックス材料においては、主成分の結晶粒への溶融金属の影響よりも、粒界に対する溶融金属の影響が耐食性を決定していることがしばしばみられる。こうした粒界における溶融金属との反応は、高い空間分解能をもつキャラクタリゼーションが必要であり、分析電子顕微鏡法が有力な手段である。 溶融ナトリウムにジルコニア(ZrO_2)、アルミナ(Al_2O_3)、窒化ケイ素(Si_3N_4)、サイアロン(SIALON)、炭化ケイ素(SiC)セラミックスを溶融ナトリウムに浸漬し、それらの微細構造を透過電子顕微鏡で観察し、溶融ナトリウムによるセラミックスの高温腐食について評価した。その成果を1993年10月の日本金属学会秋期大会において報告した。Y_2O_3とAl_2O_3を燒結助剤とするSi_3N_4燒結体においては、Si_3N_4とナトリウムの反応はほとんど生じず、粒界ガラス相にのみナトリウムが侵入していることが見出された。 セラミックス材料とAl,Zn,Cuなど溶融金属の反応については、実験が進行中である。また試料表面近傍の微細構造観察を行なうために、バックシニングによる平面観察用電顕試料の作成および集束イオンビームによる断面観察用電顕試料の作成を行なった。後者の手法により断面観察試料の作成が容易になることが期待される。
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