研究概要 |
当初の計画に従って、Al-4.5%Zn-1%Mg合金(No.1),Al-4.5%Zn-1%Mg合金に約0.2%Crおよび0.06%Tiを添加した合金(No.2)、Al-4.5%Zn-1%Mg合金に約0.2%Cr,0.06%Tiおよび0.1%Zrを添加した合金(No.3)を溶製・鋳造した。得られた各合金鋳塊に470℃-8時間の均熱処理を施した後、種々の条件の熱間圧延によって板材に加工した。これら各合金板材に溶体化処理(723K-2h)焼入れを施した後、時効処理(120℃)を行い、時効硬化曲線を求め,各合金のピーク時効試料のミクロ組織を観察した。合金No.1ではアスペクト比が約4の等軸粒に近い組織、合金No.2および3ではそれぞれアスペクト比約9および160以上の層状組織を有することを確認した。つぎに、上記の異なるミクロ組織を有する各合金板材から圧延方向と平行に丸棒試験片を切り出し、約7Kから室温までの種々の温度で引張試験を行い、耐力、引張強さ、均一伸び、破断伸びおよび引張破断に要する仕事量,すなわち切欠のない材料自身の靭性値などの温度依存性を測定した。その結果、合金No.1,2および3とも温度低下とともに耐力と引張強さが上昇した。また、均一伸び、破断伸びおよび引張破断に要する仕事量などの延性や靭性は温度低下とともに上昇し、約20〜30Kで最大値を示した。 延性や靭性と層状組織との関係については、最も顕著な層状組織を有する合金No.3の均一伸びや引張破断に要する仕事量の値が最も高い値を示したが、結晶粒のアスペクト比が約9の合金(No.2)の均一伸びや仕事量がアスペクト比約4の合金(No.1)のそれらより低い値であった。したがって、層状組織が極低温での靭・延性を向上させる要因であるとは言い難く、むしろ、靭・延性の高い順番は強度の低い順になっている。
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