今年度は、1.強磁性共鳴(FMR)スペクトロメータの組み上げと、2.FMRの測定は、(1)長手記録用塗布型媒体と、(2)垂直記録用Co-Co0蒸着膜について行った。 1.FMRスペクトロメータの組上げは予定通り進み、34GHzの測定が可能となった。 2.(1)塗布型媒体は、市販のオーディオ用メタルテープとビデオ用メタルテープの測定を行った。マイクロ波を照射して、共鳴磁場をテープ面内、およびテープ走行方向と垂直方向を含む面の2つの面内で静磁場を回転して測定した。テープに使われているFe針状粉の飽和磁化の値は文献では知られていないので、およそ純Feの値の80%(4πM=17.2kG)と仮定して、解析を行った。解析方法は、以前Baフェライト媒体の解析に用いた方法とほぼ同じである。オーディオ用メタルテープについては、異方性磁場は7.6kOe、針状比は4.8が得られ妥当な値と言える。FMRの線幅から針状粉の分散を求める解析プログラムの作成を試みているが、これはまだできていない。 (2)のCo-Co0蒸着膜においては、基礎的データを得る目的で、金属Coの超高真空蒸着膜の垂直異方性を測定した。垂直方向の異方性は、ほぽ1.3kOeだった。Co-Co0膜は、垂直記録用の記録媒体として注目されている。そして、垂直異方性とはある酸素量を含む膜について、磁化曲線の形から結論づけられている。我々の試料も同様な磁化曲線の形をしていたが、直接的な異方性の測定であるFMRによる解析結果では、垂直異方性を示す傾向は見られなかった。磁化曲線からの異方性の推定には問題があり、FMRは異方性の測定の有力な手段と言える。
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