研究概要 |
Zr基Laves相合金粉末に電解水素発生反応に対して高活性触媒作用を有するCo-Mo系合金粉末を混合添加した負極電極について充放電特性を調べていたところ,組成Co_3Moを中心とする合金粉末自身が非常に大きい充放電容量を有することがわかり,しかも従来の水素化物電極よりも優れた急速充放電性能を示すことが見出した。以下にその概要を記す。 1)Co-20〜46.2at.%Moの組成の合金電極はいずれも充放電性があり,特にCo_3Mo,3at.%B添加のCo_3Mo及び10〜20wt.%SiO_2(Al_2O_3)粉末を混合添加したCo_3Mo電極の充放電性は良好で、初期1〜2サイクルにおいて放電容量(C)が450mAhg^<-1>(充電量)以上の場合があった。しかしサイクル数と共にC値は減少し,10サイクル後には約240mAhg^<-1>に減少した。(Co+Mo)の混合粉末電極のC値は70〜75mAhg^<-1>であり,純Co粉末のそれは105-115mAhg^<-1>であった。前者のC値をCoの単位質量当たりに換算すると後者とほぼ同一になる。従ってMoは充放電反応に直接関与していないと考えられた。 2)いずれの電極も放電時の電荷移動に伴う過電圧は過電流密度においても小さく,分極特性はPt黒のそれに匹敵する。 3)充電流密度32-128mAg^<-1>の範囲では,Co_3Mo電極の放電容量(放電流密度32mAg^<-1>)に大差はない。また放電容量に及ぼす放電流の影響も同様に128mAg^<-1>までは大きな変化はなく,急速充放電性はニッケル-水素化物電池のそれに比して優れている。 4)充放電後のCo_3Mo電極をX線回折及びEDX-SEMで観察した結果,充放電後にCo(OH)_2及び金属Coの生成が観察された。また負極の平衡電位は-850mV_<vs>.Hg/HgOであることから,本電池はニッケル-水素化物電池ではなく,Coの溶出-析出反応が関与している一種のアルカリ蓄電池であることがわかった。全電池反応はCo+2NiOOH+2H_2O〓Co(OH)_2+2Ni(OH)_2,E_<ceii>=1.22Vで表される。なお初期1〜2サイクル時に高いC値を示す放電反応は,充電時に吸着した水素の電気化学的脱着反応も同時に生じていると考えられる。
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