研究概要 |
高い誘電率、高絶縁性、平坦な周波数特性を備えた誘電体薄膜は種々の電子、光学素子の基本構成に不可欠の材料として関心を集めている。バルク結晶材料の誘電特性は現在、結晶構造、結晶粒径、粒界相などの諸因子によって所用の目的に適合すべく制御が可能となっている。これに対して薄膜誘電体の多くは、製膜条件、後熱処理条件などの制約のために、低い特性に止まっているのが現状である。結晶性の薄膜誘電体を指向する場合には膜の組織制御が大きな問題となる。 この研究では、結晶における上記のような問題を避けるために、非晶質薄膜に注目した。非晶質構造は比較的大きな自由度を有するので、その短範囲規則性を、例えば熱処理条件の選定、不純物のド-ピング等によって変化させることが可能であると考えられる。本研究の目的は、チタン酸系誘電体の非晶質薄膜を作製し、それらの誘電特性と非晶質薄膜の局所構造との相関を検討することにある。主な結果を要約すれば以下の通りである。 SrTiO3,BaTiO3非晶質薄膜は結晶化温度約900K以下で誘電率の大きな温度依存性ならびに周波数分散を示すことが明らかとなった。その極大値はバルク結晶の誘電率に匹敵する程の値となった。非晶質薄膜の製膜時および後熱処理中に導入された荷電酸素空孔がこれらの挙動に重要な役割を演じていると推定された。酸素欠損量が非晶質薄膜誘電体の誘電特性制御のための一つの因子となり得ると結論された。
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