本研究では、レーザー化学反応によって鉄微粒子からなる非磁性膜を作製し、加熱により磁性膜を作製することについて調べた。 我々は、Fe(CO)_5またはFe(CO)_5-Co(CO)_3NOを原料とするCO_2パルスレーザー化学反応(SF_6赤外光増感反応または誘導破壊反応)によって、gamma鉄超微粒子またはgamma鉄-コバルト合金超微粒子(常温・常圧下で面心立方構造、粒径8nmの球状、常磁性、加熱によりalpha相・強磁性へ変態)を合成できることを、既に見いだしている。この方法により非磁性微粒子を作製するため、まず、反応ガス連続供給照射容器や微粒子捕集器の作製、照射システムの構築、原料ガス供給システムの構築を行い、gamma鉄超微粒子およびgamma鉄-コバルト合金超微粒子を作製した。次に、この常磁性微粒子の粉末をオリゴエステルアクリレートに分散したものを、ガラスの表面に塗布し、常磁性膜を作製した。作製した常磁性膜を熱オーブン(200℃以下)中に入れ硬化させた。さらにこの常磁性膜を鉄および鉄-コバルト合金超微粒子のgamma相からalpha相への変態温度(150-250℃)以上に加熱して、強磁性を発現させ磁性膜を作製することに成功した。 次に、レーザー合成法により直接基板上に常磁性金属を作製する方法について検討した。レーザー化学反応を照射容器内に設置した基板の近傍で起こすことによって、基板表面上に直接非磁性膜を作製することができた。この非磁性微粒子膜をアルゴン雰囲気下で150-250℃以上に加熱することによって、磁性膜を作製することに成功した。この方法による非磁性薄膜の生成機構、レーザー照射条件の効果についても調べた。
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