本研究は、硝酸塩イオンの電解還元により電極表面のpHを制御し、イオン半径の比較的小さい多価金属イオンが水溶液中でolationにより高分子ポリマーとなることを利用して、ゲル状金属オキシ水酸化物薄膜を形成するものである。今年度の結果をまとめると以下のようである。 (1)Al(NO_3)_3とY(NO_3)_3の混合溶液から、ステンレス鋼上へ密着性の良いゲル状Al(III)-Y(III)オキシ水酸化物皮膜を形成できる条件を見出した。フェライト系の鋼では直流カソード分極で皮膜を形成できたが、オーステナイト系の鋼は単純な直流分極では十分な皮膜量を得ることができず、アノード分極とカソード分極を交互に繰返す方法が有効であることを見出した。 (2)Al(III)-Y(III)系皮膜を施したステンレス鋼の耐高温酸化性の試験を行ない、市販のSUS 430およびSUS 304鋼が、この皮膜により高クロム鋼やアルミニウムを含む超耐熱鋼並みの耐酸化性を示すようになることを明らかにした。また、生成した酸化物スケールのX線光電子分光法による表面および深さ方向の分析、およびX線回折を行ない、耐高温酸化性の向上における皮膜の作用機構について検討した。 (3)Al(III)-Y(III)系について、水酸化物の溶解度積だけではなく、多核錯イオンの生成定数をも考慮した溶液内のイオンの存在割合をpHの関数としてコンピューターにより計算して濃度分配曲線を作成し、さらに、酸化ビスマス電極により硝酸イオンの還元による電極/溶液界面のpH変化の追跡を試みたが、この電極は文献の通りには機能しないことがわかり、現在他のpHセンサー系を探索中である。皮膜の形成機構について今後も検討する予定である。 (4)Al(III)-Y(III)以外の、Zr(IV)-Y(III)、Zr(IV)-Ca(II)、Ce(III)-Ce(IV)、Ti(IV)系についての皮膜形成法の系統的検討を開始した。
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