パルス圧力付加インジェクション装置を試作し、ビスマス基4元共晶合金(ウッドメタル)およびPb-Sn半田合金を用いて粒子噴射実験を行った。パルス圧力付加には積層型圧電アクチュエータを用い、最大変位量10μm、周波数1.7MHzのものを使用した。電力増幅器は、直流250V、周波数1MHzで、任意波形発生器およびファンクションジェネレータはそれに準じたものを使用した。また、3次元熱流体解析プログラムであるフロー3Dを用いて数値シミュレーションを行い、粒子形成条件の予備的検討を実施した。その結果、サイズがオリフィス径にほぼ等しい球形の粒子が得られることがわかった。その場合、溶湯噴射のために必要な臨界変位速度および臨界変位が存在することがわかった。粒度分布は正規分布に近く、分布の広がりは、ゾル-ゲル法で得られる粒子に匹敵するものであった。最終的な目標は、粒径50μm以下の単分散球形粒子を作製することであり、そのためには、噴射オリフィス径をより小さくし、また、噴射雰囲気の制御による酸化の防止、予熱ガスの導入による冷却速度の軽減などの工夫が必要であることが考察された。一方、粒子噴射のメカニズムについては、溶湯に接しているメタルダイアフラムを十分に小さな速度で変位させる場合、押し出された溶湯は、自重と噴射温度における表面張力が釣り合うまで切断されることなくオリフィス外縁で成長し、これら二つの力の釣り合いが破れた時点で落下する。噴射速度が大きい場合は、表面張力と重力の釣り合いだけではなく、噴射の際の溶湯の運動エネルギーの釣り合いも考慮する必要があることが示唆された。すなわち、噴射速度が大きくなれば、より小さな粒径で表面エネルギーと釣り合うことになり、得られる粒子径は小さくなる。
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