試作したパルス圧力付加インジェクション装置の噴射雰囲気を制御できるように改良した。Pb-Sn半田合金を546Kに加熱、200mmおよび100mmのオリフィスから1〜100Hzの周波数で噴射する実験を行った。その結果、200mmオリフィスを用いた実験では、ダイアフラム変位に無関係に粒径約200mmの粒子が得られた。粒径分布幅は、噴射が可能になるダイアフラム変位(噴射臨界変位)付近で極めて小さくなり、標準偏差の値は平均粒径の数%である。 Ar雰囲気中に噴射することで、ほぼ完全な球形粒子を得ることができる。以上から、電圧アクチュエータ駆動による金属溶湯のオリフィスからの噴射による球形単分散金属粒子の作製は十分に可能であることが実証された。また、完全に球形の粒子を得るためには、噴射雰囲気を制御することによって可能になることがわかった。 一方、100mmオリフィスを用いた実験では、単分離粒末は得られるが、噴射された粒径が70mm前後であった。光学顕微鏡でオリフィスを観察したところ、オリフィス内壁に酸化物とみられるド-ナッツ状の付着物が見られた。これによりオリフィス径が見かけ上50〜70mmになっており、そのために噴射粒子径が70mm程度になったものと考えられる。しかし、この結果はむしろ最終目標である粒径が30〜50mmの単分散粒子を得る見込みがついたと考えてよいと思われる。 溶湯の表面張力と運動エネルギーとの釣り合いの関係から、粒子形成のモデリングを行った。解析結果から、溶湯噴射のために必要な臨界変位の存在が確認された。また、オリフィス径に等しい単分散粒子の形成条件が推定できることがわかり、今後これにそって実験を進めていく必要があると考えられる。
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