研究概要 |
鉄粉末に銅粉末あるいはタングステン粉末を体積率で1%から20%(タングステンの場合10%)混合後、ステンレスパイプに充填・圧縮したものをHIP(850℃,1800気圧)処理し焼結素材を作製した。焼結素材より引張りおよびねじり試験片を作製し、実験に用いた。なお、第2相として当初計画していた炭化タングステン粉末は鉄粉末中に均一に混合しないことが判明したため、第2相粒子として炭化タングステン粉末の代りにタングステン粉末を用いた。まず、引張試験により得られた結果を要約すると以下のようになる。(1)タングステン粒子を含む試料の破断ひずみは、タングステン含有量の増加にともない急激に減少した。一方、銅粒子を含む試料の第2相粒子含有量の増加にともなう破断ひずみの減少は、顕著ではなかった。(2)タングステン粒子を含む試料は、変形初期に母相との界面にはく離によるボイドが発生した。一方、銅粒子を含む試料はくびれの発生前後で母相との界面にボイドが発生した。つぎに、ねじり試験により得られた結果を要約すると以下のようになる。(1)軸力を付加することにより破断までのねじれ角は増大した。破断時の相当塑性ひずみを延性の尺度として用いると、引張り、純ねじり、圧縮ねじりの順に延性は増大した。これは、変形中の試料の応力の静水圧成分(平均応力)の大小と一致している。なお、付加した軸力は座屈の危険性を考慮して引張降伏荷重の0.75倍までとした。以上の引張りおよびねじり試験の結果より第2相粒子を多く含む低延性材料の加工性改善には、引張応力を極力生じさせないよう、延性材料との複合化あるいは圧縮力付加が有効であることが示された。
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