平成5年度は、水素貯蔵合金(Zr3A12)表面を無電解めっきの手法を用いてパラジウム(Pd)被覆することを試みるとともに以下の成果を得た。 1.当初の目標通り、試料(Zr3A12)表面におよそ2μmのPd皮膜を形成する無電解めっき条件を実験的に決定することができた。 2.水素貯蔵合金の活性化方法の一つである真空加熱下での表面状態の変化を、X線光電子分光法(XPS)および走査電子顕微鏡(SEM)観察を用いた表面分析により行い、以下の知見を得た。 ・500℃以上の真空加熱で、界面を介したPdと基盤元素の相互拡散が起こる。 ・900℃の真空加熱で、表面のPd皮膜の顕著なシンタリングが起こる。 ・Pdは常に金属状態で表面に存在する。 ・Zrは600℃付近から観測されはじめ金属状態であった。 ・表面の吸着炭素がZrと反応して一部炭化物になる。 3.水素同位体(重水素)の吸蔵/脱離の機構を主として圧力測定(圧力計は平成5年度購入備品)により評価した。その結果、Pdめっきの有無に関わらず吸蔵過程は圧力の一次に、他方、脱離過程は試料表面における水素同位体原子の会合反応が律速であることが明らかになった。 以上が平成5年度の成果の概略であり、当初の計画に対してほぼ計画通りに研究を進めることが出来た。平成6年度は、これらの知見に基づき水素同位体の吸蔵/脱離における不純物ガスの影響を定量的に評価する計画である。
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