本研究は、耐不純物ガス機能が期待でき、かつ、水素溶解あるいは透過等のデータが比較的多いパラジウム(以下「Pd」と略記)を表面改質材料として使用し、貯蔵合金には筆者らが従来から水素同位体の吸蔵・離脱速度の測定/評価を行っているZr系の合金を用い、1.無電解Pdめっき法の適用性、2.めっき界面の表面科学的観察、3.めっきPd膜の温度変化、4.水素同位体の吸蔵・離脱速度に及ぼす影響、5.めっきPd膜の耐不純物ガス特性、について調べることを目的とした。 その結果、再現性良く貯蔵合金表面を被覆でき、しかも密着性も良好であることから無電解Pdめっき法がZr系貯蔵合金の表面改質方法として適用可能であること、さらに、600℃以上の加熱により厚み6μm以上にわたる試料表面層では、めっきPdと基質元素のZr等が界面を介して相互拡散し、試料表面にはPdによる改質層が形成されていることを明らかにした。また、このPd改質層の水素同位体吸蔵・脱離に及ぼす影響を調べるため、Pd改質前後における重水素(D_2)の吸蔵および脱離速度を測定した結果、吸蔵・脱離機構に変化のないこと、および、吸蔵・脱離の活性化エネルギーもさほど変化しないこと、即ち、改質による影響が小さいことを明らかにした。さらに、耐不純物ガス特性を調べるために炭酸ガス(CO_2)、および、窒素ガス(N_2)の前接触が重水素ガス(D_2)の吸蔵速度に及ぼす影響を調べた結果、Pd改質層による耐不純物ガス性能の向上が認められ本法の有効性が確かめられた。なお、不純物ガスにさらされる操作温度が高温(〜500℃)になるとPd本来の耐不純物ガス特性のさらなる発現が期待され、この点に関しては今後充分に検討が必要であると考えられる。
|