研究概要 |
1.研磨洗浄した多結晶99.999%銅電極を1N HClO_4中で定電位還元した後、合成した11-メルカプト-1-ウンデカノールHO(CH_2)_<11>SHのエタノール溶液(5mM)中に30分間浸漬して自己集合膜を作製した。この銅電極を50mMのアルキルトリクロロシランC_nH_<2n+1>SiCl_3(n=1,4,6,8,12,18)を含むヘキサデカン-四塩化炭素-クロロホルム溶液に30分間浸漬した後、水を飽和したクロロホルム溶液中に10分間浸漬した。以上の操作は大気に触れないようにして行った。この表面化学修飾により、アルカンチオール自己集合膜は銅電極上でアルキルシロキサン化され、また、隣接分子との間にシロキサン結合を生成し重合した。 2.化学修飾した自己集合膜について、X線光電子分光法および反射FTIR分光法によってSによる銅上への化学吸着、アルキルシロキサン結合等の構造を確認した。 3.大気解放0.5M Na_2SO_4水溶液中における上記の化学修飾した自己集合膜で覆われた銅電極のインピーダンス測定を行った。インピーダンスより電荷移動抵抗R_tおよび界面容量Cを求めた。n=4〜8においてR_tは最大、Cは最小となり、この間で最も緻密な耐食性のある皮膜が生成することが明らかにされた。n=18における耐食性の低下は、長鎖のアルキル基が立体障害によって配列を乱すためと考えた。分極測定の結果も同様であった。腐食防止率はアルカンチオール自己集合膜の最大値80%が化学修飾によって93%と向上した。 4.同様に処理した銅円板を用いて水滴の接触角を測定した。アルキルシロキサン化でアルカンチオール自己集合膜と同等の撥水性が得られたが、nによる変化は明確でなかった。 5.今後の課題として、回転電極を用いて自己集合膜中の酸素拡散について検討する予定である。
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